“パン好きのカフェオレ”ができるまで Part-1

第14回青山パン祭りで人気を集めた、”パン好きの牛乳”を使ったカフェオレ。パンとの相性を考えて作られた牛乳を、STOCKHOLM ROAST TOKYOの加藤バリスタがオリジナルのカフェオレとして会場内で提供しました。

1度限りだったはずのカフェオレは、姿を変えて商品化されることに。
そうして生まれた”パン好きのカフェオレ”が、第15回青山パン祭りでも登場予定です。

“パン好きのカフェオレ”はどのような道のりを経て誕生したのでしょうか? どんなパンに合わせると美味しいのでしょう。

話を聞いていくと、牛乳とカフェオレづくりの背景では、パン業界はもちろん、酪農の世界にも目が向けられていることがわかりました。

新緑のもと、”パン好きのカフェオレ”をいただきながら、開発に携わった株式会社カネカの担当者・天川さんと、STOCKHOLM ROAST TOKYO加藤バリスタ(以下SHR加藤)に話を聞きました。

 

パン好きの声から生まれた、パンと一緒に楽しむカフェオレ

こだわりの生乳を使った”パン好きの牛乳”、そして”パン好きのカフェオレ”。
商品名に「パン好きの」と名付けた理由について聞いていこうと思うのですが、ずばりパンに合う牛乳を使ったドリンクとはどんなものなのでしょう?

(カネカ天川さん)
商品の発売前にパンが好きな様々な方に意見を聞いてみると「牛乳自体は濃い方が好き」という方が多いのですが、「パンと一緒に食べるときは濃すぎるのはちょっと。。。」と言うことが分かりました。これは新しい発見でした。実は、牛乳の味が濃過ぎると、パンの味わいが消えてしまうんです。
それで、これまでにない飲み口の牛乳を開発することに。技術提携先でもあるベルギー・ピュアナチュール社の技術を使って生まれた、生乳ならではのフレッシュな味わいはそのままに、後味がすっきりした牛乳が”パン好きの牛乳”です。”パン好きのカフェオレ”は、この牛乳の製法を使って、加藤さんにアドバイスをいただきながら試作を重ねて完成しました。

そういうことだったんですね。青山パン祭りでカフェオレを提供したときは、どんな作り方をしたんですか?

(SHR加藤)
牛乳のすっきりとした飲み口を生かして、コーヒーの苦味がうまく合うように作りました。豆はブラジル産からエチオピア産へ替えて、味の強さよりも香りの甘さを出るように調整しています。基本的な作り方は日頃お店で出しているものと同じで、コーヒーと牛乳を混ぜ合わせて作りましたが、パンとのペアリングのことを考え、砂糖の量を控えめにしました。

(カネカ天川さん)
あの時のカフェオレはすごくおいしくて。ちょうど、次の開発商品を考えていたときだったので、上司も含めて飲ませて頂き、パン好きの牛乳の持ち味がすごく生きた味わいであることがよくわかりました。それで、すぐに「商品化しよう!」ということになりました。

作りたてのカフェオレならではの美味しさがあるということでしたが、商品化するにあたって大変だったのはどういった部分ですか?

(カネカ天川さん)
最初は全然うまくできなくて…正直とても大変でした。作りたての時に感じられる香りが、時間がたつと飛んでしまい、驚くような味わいを保つことがどうしてもクリアできず、加藤さんに作ってもらったときの味にならなくて。
出来たては美味しくできても、時間が経つと香りや風味がどうしても落ちてしまうんですよね。そこでよく香料が使われてしまうのですが、私たちは、シンプルな素材でこだわった商品を作りたかったので、香料も保存料も使用しないままで、時間が経っても提供できる味に辿り着けるよう、加藤さんのアドバイスをいただいて味の配合、豆の選定など、試作を繰り返しました。

具体的にはどんな工夫を?

(SHR加藤)
コーヒーに関していえば、焙煎の具合によって香りや味が変わってくることや、雑味が出てくることについて。それから砂糖の種類によって口の中への味の広がり方や強さが変わってくるので、砂糖の選択でまたバランスが取れるのでは、というお話をしました。

(カネカ天川さん)
それで、きび砂糖をアドバイスいただいて。豆に関しては、焙煎度合いについてご意見を頂戴しました。

(SHR加藤)
味の強いタイプで焙煎を深くしたものを選んだ方が良いのでは、と提案しました。

(カネカ天川さん)
それを持ち帰りまた試作を重ね、豆も砂糖も、いろいろな組み合わせを探りました。結果的にきび砂糖は使わないことになったのですが、カフェオレにおける、砂糖の役割は非常に大事なものとよく理解できました。
「パン好きの」というところで後味のすっきりさを実現させたかったので、甘さもあまり加えていません。パンの甘さが引き立つように、後味がしつこくならない程度の甘さにしています。

 

商品化されたカフェオレには「パン好きの牛乳」がそのまま使われているんですか?

(カネカ天川さん)
殺菌技術としては同じです。乳牛から絞った乳は「生乳」といいまして、それを加熱すると「牛乳」になるんです。”パン好きのカフェオレ”は生乳ベース、そこにコーヒー、砂糖を混ぜ合わせて製造しています。
熱が加わると、どうしてもフレッシュな味わいが失われてしまうので、なるべく強い熱を加えないように作っています。出来るだけ強い熱を与えないように、ピュアナチュール社の独自の製法がここに活きています。

なるほど。生乳を扱うことで、手間やコストもかかっているのでしょうか。

(カネカ天川さん)
そうなんです。
生乳は牛乳に比べて衛生管理としては、非常に手間がかかるのですが、生乳を使うと明らかに味が良くなるので、その分手間もコストもかかるのですが、頑張りました。

そうしてできた完成品を飲んで、加藤はどんな感想を?

(カネカ天川さん)
加藤さんに飲んでいただいたときに、一言目に「濃いですね」といっていただけたのですが、あれが我々としてはすごく嬉しくて。

濃い、というと?

(カネカ天川さん)
実は、水を足さずに、本当に生乳、コーヒー、砂糖のみで作っています。

(SHR加藤)
牛乳そのものを飲んでいる感じがして、良いなと思いました。

水が入っている商品もあるんですね。

(カネカ天川さん)
水を加えて製造されている商品もありますが、後味はすっきりだけど、濃厚な味わいにこだわりたかったので、原料は生乳、コーヒー、砂糖の3つだけ。味わいが薄まらないように水が一切入らないように製造しています。

えー!すごいですね。

(カネカ天川さん)
パン好きの牛乳の長所である、すっきり後味を追求した味にこだわり過ぎて、完成してみれば、生乳94%、豆もグアテマラ産の最高グレードを2つの焙煎度合いに分けて使用するなど、妥協のない商品作りが出来ました。おかげで価格が高くなってしまいましたが(笑)

 

お金をかけてでも味わいを追求しているんですね。
次の記事では、乳製品事業を立ち上げた背景について詳しくお話を聞いていきたいと思います。

2019.05.08